スニーカー業界で結果を出すことは決して簡単ではありませんが、Axel Arigatoに関しては一見、苦労することなく成功を手に入れたようにみえます。今回LuisaViaRomaは、このカルトブランドの共同ファウンダーであるMax SvärdhとAlbin Johanssonにインタビューを行いました。2人はそれぞれのスキルを活かしながら、Axel Arigatoを今最も注目されているブランドの一つへと押し上げました。スニーカーブランドとして誕生したAxel Arigatoは、今では服や小物アイテムを含むメンズ&ウィメンズコレクションを手がけ、Instagramでは多くの人々がAxel Arigatoルックで登場しています。ブランドの誕生、デジタルと販売店舗の統合、トレンド、コンシューマリズム、ウィークリードロップ、サステナビリティについて語ってくれた、MaxとAlbinのインタビューをご覧ください。
AJ: Albin Johansson (CEO&共同ファウンダー)
MS: Max Svärdh (クリエイティブディレクター&共同ファウンダー)
2人の力で成り立っているAxel Arigatoですが、会社の経営などはどのように分けられているのですか?お互いをどのように補い合っているのでしょうか。
AJ: 2人ともビジネスのすべてに関わっていますが、私は特にビジネス面に重点を置いていて、Maxは主にブランドとデザインの構築に携わっています。私たちはアートとコマースがどちらも同じように大切だと考えていて、これらの要素がなければ成功することはできません。また意思決定は迅速に行い、必要以上に物事に長くこだわることがありません。お互いに同じスピード感を持っているので、このことがパートナーを組んだ後、早い段階で私たちの自信につながりました。
MS: 私は主にブランドとデザインに取り組んでいますが、17歳の頃から起業し、Eコマース分野でのキャリアも積んでいました。一番大切なブランドに対する目標とビジョンは、2人とも同じものを持っています。
2人はどこで初めて出会ったのですか?またAxel Arigatoという名前の由来や、どのようなアイデアからブランドが誕生したのか教えて下さい。
AJ: 私たちは共通の友人を通して知り合いました。スウェーデンのヨーテボリは小さな街なので、もし関心事が同じであれば、集まる場所も同じになることが多いと思います。2人とも服やシューズ業界に興味を持っていたことと、ある特定のブランドが何世代にもわたって多くの異なるターゲット層に支持されているという事実に関心を持っていたことが、ブランドの設立につながりました。
MS: スニーカーブランドを立ち上げた理由は、ハイクオリティシューズと手頃な価格のシューズのマーケット間にギャップがあったからです。白いレザースニーカーがどうして400ユーロもするのか理解できませんでした。同時に、新しいアイデアやコンセプトをプラットフォームで拡げていける、現代的な何かを創りたいとも考えていました。多くのブランドが消費者市場の急速な変化に追いついていないと感じていたので、同じ速度で進化できるブランドがあれば、今意味のあるものを提供できると思ったのです。Axel Arigatoというブランド名は、他のどんなものとも関連しない名前を付けたいというアイデアから生まれました。他のものを想像させるのではなく、私たち自身のブランドに直結する名前です。
ファッションとは関係のないバックグラウンドを持つ2人が、ブランドにもらたらすものは何だと思いますか?ファッション業界を驚かせるようなアイデアはありますか?
AJ: 2014年にAxel Arigatoを設立したとき、私たちは、なぜ、どのようにモノをつくるのか、人々は何を本当に望んでいるのかということを考えていました。そして考えた結果として、業界の基準や現状とは反対のことを数多く実行してきました。最初の数年間はホールセールパートナーなしで、販売とコミュニケーションは消費者と直接行いました。シーズンごとのコンセプト開発やコレクション発表は行わず、毎週アイテムをリリースしていました。そして新製品の需要に迅速に対応し、より健全な在庫システムを実現するために、短めのサプライチェーンで取り組んでいました。ショップを文化的な目的地という視点で捉え、天井から床まである大きな棚にスニーカーを並べた、単なる取り引きを行うスペースのようにはしたくないと考えていました。現在は同じ考えで取り組みを行うブランドが増えましたが、2014年の時点ではAxel Arigatoだけだったはずです。そして当時、業界の人たちは、そのやり方は間違っていると言い続けていました。でも私たちは自分たちの考えを信じ、業界のベテランたちにではなく、消費者にアプローチし続けました。
MS: Axel Arigatoが成功したのは、常にマーケットに順応できる力があるからだと思います。常に自分自身を改革し、周りで起こっていることに目を向け、次世代の消費者からの影響を受けています。多くのブランドはこのとてもシンプルな部分で失敗していると思います。
ストリートウェアとスニーカーの世界に惹かれた理由は何でしょうか。ストリートウェアはこれまでどのように変化し、これからどうなると思いますか?
MS: スニーカーはずっと大好きだったのですが、2人ともその業界で働いた経験から、何かが足りないと感じていました。スニーカーは調整や変更可能な多くのパーツから構成されていて、デザインするのがとても楽しいアイテムです。
AJ: Covid-19の前からカジュアルが大きなトレンドであることは分かっていましたが、今も服に快適さを求める声が高まっています。現在はすべてが「ストリートウェア」になっているので、その定義は難しいですが、私にとってストリートウェアは、人々が変化していく上で、よりカジュアルで幅広い文化につながる服を着用したいという考え方だと思っています。
ヨーテボリで育った2人ですが、その環境はブランドや会社の運営に影響を与えていますか?Axel Arigatoに北欧的な要素は組み込まれていますか?
MS: ミニマリズムという要素はブランドの柱であり、ストアデザインや製品、インテリア、パッケージ、グラフィックなど、私たちの美学にも影響を与えています。ここには確立されたファッション業界がないので、部外者のような感覚ですべてを見てきましたが、そのことが思いがけないビジョンを与えてくれると思っています。
AJ: 私たちはブランドを設立した1日目から、グローバルなブランドになりたいと思っていました。スウェーデンと北欧は私たちのホームマーケットですが、小さな市場でもあります。なので、その他のマーケットや文化、動向などを見て、国際的なブランドになることを視野に入れてきました。ブランドを持つのであれば、ローカルトレンドを理解しながらグローバルに展開することが重要になります。
デザインする際に影響されるものはありますか?いつもどのようにフレッシュなアイデアを保っているのですか?スニーカー業界でAxel Arigatoが際立っている理由は何でしょうか。
MS: 多くのことから影響を受けますが、私は日常生活からインスピレーションを得ることが多く、自分の周りで起こることに敏感に反応します。それから何か新しいモノを生み出すときには、旅や新しい人たちとの出会いが一番刺激になります。ソーシャルメディアやデジタルコンテンツも、すばらしいインスピレーションにつながります。私たちのブランドはプロダクトにフォーカスし、顧客目線からアプローチしています。履けないものや、日常生活において意味をなさないものはつくりません。
AJ: ブランドのいいところは、オープンマインドな姿勢とコンシューマーへの深い理解、一貫したプロダクトイノベーションを考慮した取り組みを行っている点だと思います。Axel Arigatoは単なる製品ではありません。ポジティブなプラットフォームとしてブランドを立ち上げ、コンシューマーとの真のつながりを築き、Axel Arigatoが生み出す世界に彼らを招き入れることを目的としています。
Covid-19の影響で多くの店舗販売を行う企業が深刻な状況に陥っています。Axel Arigatoは常にEコマースとEリテーラーに焦点を当てていましたが、この方針はどのように決定されたのですか?現在の状況とビジネスのデジタル化についての考えを教えて下さい。
AJ: 2014年にブランドを設立した頃はDTC (消費者直結型) ブランドとして完全に機能していたので、ブランドの構築と認知度を広めることに集中することができました。従来のシステムとは違い、オンラインは制限がなく数日でメッセージを広めることができるなど、リアクティブな活動を行うことができます。現在の困難な状況の中、私たちは当時の取り組み方を振り返り、実際にブランドの焦点をオンラインに戻しました。その結果、サイトのアクセス数と需要の両方が指数関数的に成長し、ブランドに大きな利益をもたらしました。
2020年に始まったこの状況に、Axel Arigatoはどう順応してきましたか?
AJ: ブランド設立当時のオンラインマーケットでの経験を活かし、オンラインでの取り組みに再び焦点を絞ったので、そのことが功を成しました。パンデミックが始まってから、InstagramやTik Tokを通して人々とのコミュニケーションを増やすために、複数のデジタルイベントを開催しました。私たちは今の困難な状況でも、チームが活気に満ちた新たな自信を持って、さらに強く成長していくと確信しています。
ブランドの大きなブレークスルーは何だったと思いますか?成功した、と感じたのはいつだったのでしょうか。
AJ: ロンドンにフラッグシップショップをオープンし、そこに訪れる人たちを見て、何かが起こり始めていると実感しました。私たちが生まれたスウェーデンではなく、ロンドンのソーホーにある自分たちのショップを見た瞬間は、チーム全体で誇りに思いました。そのときに感じた思いは決して忘れることはありません。
MS: 心に残っているもう一つの出来事は、2019年に私たちがコペンハーゲンで開催したポストヒューマンフェスティバルです。これは500人以上のゲストと、IAMDDBやAnime、Earthgangをはじめとする素晴らしいアーティストたちを迎えて開催したフェスティバルです。エキサイティングなイベントをゲストに無料で体験してもらいたいという思いで行いましたが、今後もスペシャルな体験を人々に提供したいと思っているので、2回目のフェスティバルの開催も考えています。
ブランドはInstagramで大きな存在となっていますが、これはブランドの認知度を広めたり、人々とブランドを直接つなげたりするための手段として役立っているように見受けられます。現在マーケティング戦略としてどのような方法を取り入れていますか?
MS: デジタル的な取り組みはブランドにとって非常に大切なことです。Axel Arigatoは雑誌ではなく、Instagramで育ったブランドだとよく言われます。Instagramのようなプラットフォームは、ブランドにとって日常的にコンシューマーとコミュニケーションを取りながら強い関係を築き上げる手段となっていますが、変化には敏感に順応し、アプローチ方法を常に考え直す必要はあると思っています。
「Drop of the Week」のコンセプトについてですが、2014年から毎週水曜日に新しい色、またはシルエットを週1で発売しています。一貫した方法で新しいモノを生み続けていますが、このコンセプトはどのように誕生したのですか?
AJ: 「Drop of the Week」の背後には、多くのブランドが消費者の変化に追いついていないという事実と、ニーズに応えられる新しい違う何かをつくりたいという願いがあります。日々変化する世界では、進化のニーズを高める文化を生み出すことが重要です。人々の声に耳を傾けて変化に対応できないのであれば、それはビジネスになりますか?私たちのこの唯一無二のリリース方法は、Axel Arigatoがより健全な在庫を維持し、意識的な購入を促すことにもつながります。
MS: 「Drop of the Week」は顧客を製品づくりの中心としていますが、顧客のフィードバックを参考にして新しいスタイルを開発することもできます。人々の声に耳を傾けると、いいことが起こるんです。
Axel Arigato以外で、持っているお気に入りのスニーカーはありますか?
MS: 見た目はイマイチですが、今はNorthwaveのSorleブーツを気に入っています。
AJ: スウェーデンの今の天気を考えると、ナイキのACGシリーズのスニーカーがお気に入りです。
よくインフルエンサーとの取り組みを行っていますが、インフルエンサーマーケティングの将来はどうなると考えていますか?
AJ: 人は常に誰かに憧れを抱きますが、これはいつになっても変わらないと思います。ソーシャルメディアはこれまで有名人にしか与えられなかったようなチャンスを、一般の人々にも与えることができます。そのためインフルエンサーマーケティングは急速に増加しました。今後一時的に飽和状態になるかもしれませんが、TikTokなどの新しいプラットフォームは登場し続けます。こういった新しいプラットフォームを早い段階で取り入れる人たちがフォロワーを獲得して、ユニークな何かを提供していくでしょう。
ファッションの未来は持続可能なサステナビリティに向かっています。多くのブランドや消費者がサステナブルな選択へとシフトしていますが、Axel Arigatoはどのような取り組みを行っていますか?ファッション業界はより持続可能な手段を取り入れるためにどうすればいいと考えていますか?
MS: ファッション業界だけでなく、未来のためにすべての業界が地球と人々のために持続可能な方法で社会的に取り組まなければなりません。Axel Arigatoは素材や生産面の他にも、季節に関係なく、長く着用できるデザインでアプローチすることで、可能な限り持続可能な製品を開発することに力を注いでいます。中には寿命がある製品もあると思いますが、もう使用しなくなったAxel Arigatoのアイテムは再度売りに出したり、または寄付したりしていただくように勧めています。
AJ: 私たちは2020秋冬コレクションの95%をリサイクル、または100%オーガニック素材で制作しました。中心となるシューズコレクションに関しては、すべてのソールに20%の産業廃棄物のゴムを使用し、優れた品質を提供しています。さらにパッケージやロジスティック、店内、レザーの調達など、ヨーロッパの信頼するパートナーとの取り組みにより、すべての側面において持続可能な手段の採用に努めています。ブランドの長期的な目標は、サステナビリティという要素を日常のあらゆる部分に組み込んでいくことにあります。社会的、環境的に与える負担を最小限に抑えることは終わりのない旅ですが、最終的な目標は、持続可能な方法で成長し続けることにあります。
2020年の経験が仕事において、また私生活においてどのような変化をもたらしましたか?
AJ: 私はインスピレーションやモチベーションを探すために旅に出かけることがとても好きなのですが、2020年はそれができませんでした。自宅にいるのも悪くはありませんが、世界中のビジネスパートナーや顧客に会うために、また旅に出ることを心待ちにしています。日常生活でも仕事上でも、習慣的に同じことを繰り返すことはある意味必要ですが、長期的にみると私には喜びを与えてくれません。
Axel Arigatoの2021年のプロジェクトを教えて下さい。
AJ: これまでの取り組みは引き続き行っていきますが、もっと大きな媒体を通して、より大きな規模でブランドの成長と拡大にフォーカスしたいと思っています。現在の状況もあり、過去6ヶ月をみるとオンラインでの販売が増加していますが、私たちはショップの力も信じています。先頃ドイツに2店舗をオープンしました。1店はミュンヘンに、もう1店はハンブルクです。今後はドバイ、パリ、そしてロンドンの別の場所にもショップをオープンすることを検討しています。
A special thank you to Max and Albin.
Portraits of Max and Albin by Josefine Laul.